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主 文1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする。事実及び理由第一 請求 第三 当裁判所の判断一 甲A1ないし33(枝番を含む。)、甲B1ないし14、甲C1ないし13、甲Dないし19、甲E1ないし7、乙1、証人中井伊都子の証言、原告金洙榮及び同****の各本人尋問の結果、並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 1 国民年金制度及び国民年金法の概要 (1) 国民年金制度は、それまで年金制度から取り残されていた農業者、自営業者等を対象とした制度として、昭和34年11月1日に施行された。 (2) 国民年金制度は、昭和60年改正法により、被保険者の範囲、年金給付の算定方法などについて大幅な改正がされ、国民年金の適用は全国民に拡大されて、全国民共通の基礎年金を国民年金から支給することとし、その上に厚生年金や共済年金の被用者年金から所得比例等の年金を上乗せするという、「2階建て」の体系に再編、統一された。 2 条約の定め (1) 昭和41年12月17日、国連総会において、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年8月4日条約第6号、A系統)及び市民的及び政治的権利に関する国際規約(同日条約第7号、B規約)、それに個人通報に関する選択議定書(第一選択議定書)が採択され、我が国は、昭和54年6月21日、これらのうち、A規約及びB規約のみを批准した。そして、A規約及びB規約は、同年9月21日、発効した(昭和54年外告187)。 ア A規約2条においては、1項として「この規約の各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。」、2項として「この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する。」、3項として「開発途上にある国は、人権及び自国の経済の双方に十分な考慮を払い、この規約において認められる経済的権利をどの程度まで外国人に保障するかを決定することができる。」と規定されている。A規約の9条においては、「この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」と規定されている。 イ B規約の2条においては、1項として「この規約の各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又はその他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する。」、2項として「この規約の各締約国は、立法措置その他の措置がまだとられてない場合には、この規約において認められる権利を実現するために必要な立法措置その他の措置をとるため、自国の憲法上の手続き及びこの規約の規定に従って必要な行動をとることを約束する。」、3項として「この規約の各締約国は次のことを約束する。(a)この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること。(b)救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上、若しくは立法上の機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させること。(c)救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保すること。」と規定されている。B規約の26条においては「すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又はその他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。」と規定されている。 (2) 我が国は、昭和56年、難民の地位に関する条約(昭和56年10月15日条約第21号)を批准し、更に、難民の地位に関する議定書(昭和57年1月1日条約第1号、以下、両者をあわせて「難民条約等」という。)を批准し、いずれも昭和57年1月1日に発効した。 3 国民年金制度における国籍要件 (1) 旧法7条1項は、被保険者の資格について、「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民は、国民年金の被保険者とする。」と定め、日本国民に限定していたため、障害年金についても、外国人は支給対象から除外されていた。ただし、アメリカ合衆国の国民については「日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約」により例外的に日本国民と同一の取扱いがなされていた。 (2) 障害福祉年金のうち、補完的福祉年金についての旧法56条1項は、「ただし、その者が、廃疾認定日において、日本国民でないとき(中略)は、この限りでない。」として、国籍要件を定めており、また、経過的福祉年金についての旧法81条は、「昭和14年11月1日以前に生まれた者(中略)が、(中略)昭和34年11月1日において別表に定める1級に該当する程度の廃疾の状態にある時は、第56条第1項本文の規定にかかわらず、その者に同条の障害福祉年金を支給する。」と定めて、旧法56条1項を引用していたことから、同様に日本国籍を有していることが要件となっていた。 (3) 我が国は、昭和56年10月15日、前記のとおり難民条約を批准し、更に、難民の地位に関する議定書を批准し、これに伴い、これらの各条約に関係する国内法の整備のため、整備法が制定された。 4 本件各処分等 (1)ア 原告らは、いずれも、障害等級が1級または2級の状態であるが、それぞれ、国民年金法及び関係法令によると、旧法56条1項ただし書きの国籍条項によって、障害福祉年金の支給を受ける資格を有しないこととなる者である。 イ そして、整備法附則5項によれば、国民年金制度における国籍要件が撤廃された後も、原告らはなお障害福祉年金の支給を受ける資格を有していないこととなり、また、昭和60年改正法により障害福祉年金が障害基礎年金に裁定替えされた後も、同法附則32条1項により、原告らは障害基礎年金の支給を受ける資格を有していないこととなる。 (2) 京都府知事は、各原告らに対し、旧法下の国籍条項を理由として、別紙・一覧表「処分日」欄記載の各日付けで、それぞれ障害基礎年金を支給しない旨の本件各処分をした。 5 平成4年ころ以降、地方公共団体において、原告らのように、国民年金法上、年金支給を受けられない在日外国人の障害者等に対し、一定の給付金を支給する扱いがされるようになり、現在、京都市を含む多くの地方公共団体において、月額数万円から1万円の範囲での給付金(京都市は月額3万6000円)が支払われている(甲D12) 6 原告らのうち、原告****、同****は、いずれも出生以来我が国に継続的に居住し、昭和63年11月25日、帰化により日本国籍を取得した者であり、その余の原告らも、いずれも出生以来我が国で継続的に居住し、特別永住者として、それぞれの肩書住所地で居住している。 二 争点1について原告らの主張は、そもそも、昭和34年11月1日に施行された国民年金法の下で、整備法以前の旧法下における国籍条項は、憲法14条1項、または昭和54年9月21日に発効した国際人権規約であるA規約2条2項、9条、B規約26条に違反する無効な規定であるとし、更に、国籍条項の撤廃に伴い、従前国籍条項により障害福祉年金の支給対象外となっていた原告らに対しても、遡及して、または少なくとも国籍条項撤廃のときから、年金を支給するような何らかの措置をとるべきであったのに、そのような措置をとることなく、かえって整備法附則5項及び昭和60年改正法附則32条1項の規定を設けて、原告らに年金を支給しないこととしたことが、憲法14条1項または国際人権規約(A規約2条2項、9条、B規約26条)に違反する、というものであると解される。以下、順次検討する。 1 旧法下の国籍条項が憲法14条1項に違反するとの主張について (1) 憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである。(最大判昭和53年10月4日・民集32巻7号1223頁参照)。そして、憲法14条1項も、その保障の対象となる権利等の性質上特段の事情が認められない限り、少なくとも我が国に在住する外国人に対してもその保障が及ぶものと解される。 (2) しかしながら、憲法14条1項は、合理的な理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではないと解すべきである(最大判昭和39年5月27日・民集18巻4号676頁参照)。 (3) そして、国民年金制度は、憲法25条2項の規定の 趣旨を実現するため、老齢、廃疾または死亡によって国民生活の安定が損なわれ ることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上 に寄与することを目的として発足したものであり(旧法1条)、また、被保険者 が保険料を拠出し、それを主な財源として給付するという保険方式を基本とする 制度であって、給付の前提として、被保険者となるべき者の範囲を定め(旧法7 条)、被保険者には原則的に保険料を納付することを義務付け(旧法88条)、86 一定期間以上の保険料の納付という負担を要求するものである。このような拠出 制を基本とする国民年金制度において、障害福祉年金は、所定の保険料の納付の 要件を満たすことができず、または保険料を納付する機会がなかった者に対し、 例外として、補完的ないし経過的に、全額国庫負担による無拠出の年金を給付す ることとしたものであり、このような国民年金制度の趣旨に照らすと、立法府が、 その被保険者の範囲や障害福祉年金の支給の対象範囲を定めるに当たっては、も ともと広範な裁量権を有しているものというべきである。更に、社会保障上の施 策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の 存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の 政治・経済・社会的諸事情に照らしながら、その政治的判断により決定すること ができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民 を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきものと解される。(最一小 判平成元年3月2日・判例時報1363号68頁、最一小判平成14年7月18日・判例時報1799号96頁参照)。 (4) 旧法下の国籍条項は、前記のような国民年金制度 における障害福祉年金の支給の対象範囲の問題であるから、それが憲法14条1 項に違反するかどうかを判断するに当たっては、前記のような憲法25条2項に 基づく立法府の裁量権があることを前提として、それによる区別が何ら合理的理 由のない不当な差別的扱いかどうかの観点から判断されなければならないという べきである(最三小判平成13年3月13日・判例地方自治215号94頁参照)。 (5) 以上の判断に従って検討すると、前記のような国 民年金制度において原則的形態である拠出制の場合の被保険者の範囲を定めるに 当たって、保険料の支払いを義務付けられることになる保険料納付期間中に我が 国に在住することが総体的には必ずしも安定的ではない在留外国人を除外し、そ れとの関連で、拠出制を補完するためのまたは制度発足時に拠出制により得なかっ た場合の障害福祉年金についても、同様に、国籍要件を定めることは、合理性を 欠くものとはいえないというべきである。 (6) このようにみてくると、旧法下の国籍条項も、経 過的な性格を有する障害福祉年金の給付に関し、廃疾の認定日である制度発足時 の昭和34年11月1日において、日本国民であることを要するものと定めるこ とも、いずれも、憲法25条2項の趣旨を実現するための立法の際における立法 府の裁量を前提とした上で、何ら合理的理由のない不当な差別的扱いとはいえず、 憲法14条1項に違反しないものというべきである(前記の最一小判平成元年3月 2日参照)。 2 旧法下の国籍条項が国際人権規約に違反するとの原告ら の主張について (1) 旧法下の国籍条項が憲法14条1項に違反しないの は、前記のとおりであるが、前記認定事実のとおり、昭和54年9月21日、国際人 権規約(A規約及びB規約)が発効したことにより、次に、旧法の障害福祉年金の 給付に関して日本人と外国人とを区別する国籍条項が国際人権規約(A規約2条 2項、9条、B規約26条)に違反するかどうかも問題となるので、以下、この点 を検討する。 (2) まず、A規約2条2項、9条では、締約国は、A 規約に規定する権利が「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の 意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位による」いかなる差 別もなしに行使されることを保障することを約束し、社会保険その他の社会保障 についてのすべての者の権利を認めると規定されている。しかし、A規約は、2 条1項において、締約国は「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規 約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における 利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、 特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する。」 としていることからも明らかなように、2条2項や9条の規定は、締約国におい て、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであ ることを確認し、その権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政 治的責任を負うことを宣言したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付 与すべきことを定めたものではないというべきである。したがって、A規約は、 旧法の国籍条項を直ちに排斥するものとはいえないというべきであり(前記の最 一小判平成元年3月2日参照)、旧法下の国籍条項がA規約に違反して無効にな ることはないと解される。 (3) 次に、原告らのB規約違反の主張について検討す
る。B規約においては、2条1項が、締約国が、その領域内にあり、かつ、その
管轄の下にあるすべての個人に対し、「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治
的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等に
よる」いかなる差別もなしにこの規約(B規約)において認められる権利を尊重し
及び確保することを約束すると規定し、更に、26条において、「すべての者は、
法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権
利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、
言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生
又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を
すべての者に保障する。」と規定している。したがって、26条の差別禁止の原則
が適用されるのは、その文言上は、B規約において認められる権利に限定されて
はいない。そして、このことは、規約人権委員会の一般的意見18でも確認されて
いる(甲A4の訳文6頁)。そして、規約人権委員会は、社会保障についても、B
規約26条違反を認めた選択議定書5条4項に基づく見解を採択しており、その中
には、B規約26条は、社会保障を供給すべき立法を制定することをいかなる国家
にも要求するものではないが、立法が採択されたときは、その立法は規約26条に
従うものでなければならず、問題なのは、社会保障がその国において漸次確立さ
れていくべきかどうかではなく、社会保障を規定している立法がB規約26条の平
等原則に違反しているかどうかにあるなどと説示したものがある(例えば、ブリー
クス対オランダ事件)。 (4) ただし、規約人権委員会は、B規約の規定の締約 国の規約の履行状況に関する報告を検討する機関であり(B規約40条4項)、その 一般的意見や個人の通報に対する意見の目的は、規約の実施の促進、締約国の注 意喚起などであって、B規約の実施に当たって参考とされることが求められてい るにすぎないというべきである。更に、前記認定のとおり、我が国は、第一選択 議定書を批准しておらず、B規約41条に基づく規約人権委員会の検討する権限の 受諾宣言もしていない。したがって、いずれにしても、規約人権委員会の意見は、 我が国に対して法的拘束力を有していないというべきである。そして、規約人権 委員会の意見が、規約の解釈の補助的手段となることは、いうまでもないけれど も、同意見によっても、B規約26条は、すべての区別を禁止しているのではなく、 その区別の基準が合理的であり、かつ客観的である場合であって、かつ、規約の 下での合法的な目的を達成するという目的で行われた場合には、処遇の差異は、 必ずしもすべて「差別」を構成するわけではないとの意見が説かれているのであ る(甲A4の訳文6頁)。このように、規約人権委員会の意見によっても、国内 法の内容がこの「差別」に該当するか否かの判断に当たっては、それぞれ、その 国内法の内容による区別が合理性を有するものであるか否かの観点からの検討が されなければならないものとされていることは明らかである。 (5) のみならず、B規約と同時に国連総会において採
択され、前記のとおり、B規約と同時に我が国が批准してその後に発効したA規
約には、2条1項、2項、9条の各規定があり、それらの規定は、A規約に規定
されている社会保険、社会保障の権利については、締約国において、それらの権
利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、その権利
の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明
したものと解される(前記の最一小判平成元年3月2日参照)。すなわち、これら
のA規約の各規定に照らすと、A規約の締約国は、このような政治的責任を負う
ことになるのであり、その立法府は、その国の予算上の制約、経済、社会、国際
情勢等の事情をふまえて、そのための立法措置をとることが予定されているとい
うべきである。その意味で、A規約は、我が国の憲法25条2項と同様の趣旨を有
するというべきである。そうすると、A規約及びB規約を批准した我が国におい
ては、A規約に規定された社会保障の権利についてB規約26条の解釈をする場合
には、立法によってA規約に規定された社会保障の権利を拡大していくというこ
のようなA規約の趣旨とその要請との間に整合性を持つように解釈せざるを得な
いというべきである。 (6) 原告らは、更に、B規約の解釈について、条約法 に関するウィーン条約(昭和56年7月20日条約第16号、昭和56年8月1日発効)の 各規定を援用するが、そもそも、同条約には遡及効がなく(同条約4条)、B規約 の解釈について、同条約は直接には適用されない。ただし、ウィーン条約が規定 する解釈方法は、条約の解釈に関する従来の国際慣習を明文化した普遍的なもので あると解されるところ、同条約31条1項は、「条約は、文脈によりかつその趣旨 及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものと する。」と規定し、同3項は、「文脈とともに、次のものを考慮する。」として、 「(c)当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則」を挙げる。B規 約26条の解釈に当たって、同条項の「文脈」と共に、前記判断のとおり、B規約 と並んで審議・採択されたA規約の内容や趣旨を考慮することは、ウィーン条約 の同項の趣旨にも反するものではないと考えられる。 (7) そうすると、旧法下の国籍条項は、B規約26条と の関係においても、憲法14条1項との関係で前記で判示判断したとおり、立法府 である国会に裁量があることが前提であって、しかも、国民年金の原則的形態で ある拠出制の場合の被保険者の範囲を定めるに当たって、保険料の支払を義務付 けられることになる保険料納付期間中に我が国に在住することが総体的には必ず しも安定的ではない在留外国人を除外し、それとの関係で、拠出制を補完するた めの、または制度発足時に拠出制により得なかった場合の障害福祉年金について も、同様に国籍要件を定めたもので、このような国籍条項は、合理性を欠くもの とはいえないというべきである。また、国籍要件は、その区別の基準は客観的で、 それは、社会保障の拡充という憲法25条2項やA規約の発効の後はその趣旨にも 合致する立法趣旨を実現するための立法過程で生じたものとみられるから、結局、 この国籍条項は、B規約26条にも違反しないもので、有効であったというべきで ある。 3 整備法による改正の際及び昭和60年改正時の立法上の措 置が憲法14条1項、国際人権規約に違反するとの原告らの主張について (1) 次に、整備法による改正によって、昭和57年1月 1日から、外国人についても、拠出制の年金の被保険者の資格に関する要件から 国籍要件が撤廃され、更に、障害福祉年金についても、旧法の国籍条項が削除さ れて、外国人も、改正法の要件を満たす限り、障害福祉年金が受けられるように なり、A規約の関係では社会保障の範囲が拡張されたといえる。しかし、今度は、 改正法の施行日及び整備法附則5項の関係で、外国人相互の間で、昭和57年1月 1日までに20歳に達し、それまでに障害の認定を受けて旧法下で障害福祉年金が 不支給状態になった者(原告らは、これに含まれる。)と、その後に改正法の要件 を満たすことにより障害福祉年金を受給できるようになった者との間で、障害福 祉年金が受給できるか否かで差異が生じることとなり、確かに、両者の相異は、 生年月日の前後によってのみ、その支給に差異が生じることになるのである。し かも、原告らのように、整備法による改正前にすでに障害福祉年金の不支給状態 となっていた者にとっては、このような差異が日本国籍を有する者との間の前記 の差異に加えて生じることになるともいえる。 (2) このような観点からは、整備法による改正によっ て、国籍要件を撤廃するに際しては、原告らのように、旧法の国籍条項を削除す るのみではなお障害福祉年金の給付の対象から外れる者に対しても、何らかの救 済措置を講じることが望ましいものであったことは否定しがたいところである。 特に、前記の認定事実によれば、原告らは、いずれも我が国において出生し、以 来我が国において継続的に居住して生活をしている者で、それぞれ重度の障害を 負っている特別永住者であるから、在日韓国・朝鮮人に関する歴史的経緯等をふ まえた何らかの立法措置がされるべきであったとの主張も、立法論としてあり得 るところである。更に、原告らのうち原告****及び****については、整 備法による法改正時及び昭和60年改正法による改正時に立法上の救済措置がとら れなかったため、その後の昭和63年11月25日に帰化して日本国籍を取得したとし ても、なお障害基礎年金を支給されないままとなったものである。前記認定事実 によれば、現在では、全国の多くの地方公共団体で、無年金となる外国人障害者 等のための特別な救済制度が設けられるに至っている。 (3) しかしながら、旧法下の国籍条項が憲法14条1項 にもB規約26条を含む国際人権規約にも違反しないことは前記判示のとおりであ り、この整備法による改正も、国籍条項が不合理であるとしてそれを撤廃するこ とを目的とするものではなく、難民条約等へ加入するに当たって我が国の国内法 を整備する目的でされたものである。したがって、この改正の際においても、憲 法14条1項及び国際人権規約(特にB規約26条)との関係で、国籍条項を削除した 改正法の効果を遡及させるような立法措置を講ずるか否かについては、立法府が 裁量を有するものであることは、すでに説示したところからも明らかであるとい うべきである。前記の最一小判平成元年3月2日も、同じく最三小判平成13年3 月13日も、国籍条項を削除した昭和56年法律第86号による国民年金法の改正の効 果を遡及させるというような特別の立法措置を講ずるかどうかは、もとより立法 府の裁量事項に属することである、と説示している。そして、この改正の際にも、 立法府としては、国籍条項の削除によって更に障害福祉年金の支給対象とする外 国人の範囲・要件を何らかの形で画さざるを得ないものであって、その際に、拠 出制の年金の被保険者の資格についても国籍要件をなくすることとした上で、障 害福祉年金の受給についても、改正法の施行の日を基準とすることとし、それま で不支給状態となった者について遡及的に何らかの措置をとらなかったとしても、 そのこと自体は、合理性を欠くとはいえないというべきである。更に、このこと は、昭和60年改正法による改正の際においても同様であるというべきである。 (4) したがって、旧法下の国籍条項によって障害基礎 年金の不支給状態となった者に対して何らかの立法措置を講じることなく、整備 法附則5頁により国籍要件の撤廃の効力が遡及しないことを明言し、更に昭和60 年改正法附則32条1項により、原告らに障害基礎年金の受給資格を認めなかった ことも、なお、憲法14条1項、更には国際人権規約(特にB規約26条)に違反する とまではいえないというべきである(憲法14条1項に違反しないことは、前記の 最三小判平成13年3月13日参照)。
4 以上のとおり、旧法下の国籍条項、整備法附則5項、
昭和60年改正法附則32条1項の各立法行為及び原告ら主張の救済措置をとらない
立法不作為は、いずれも、憲法14条1項、A規約2条2項、9条及びB規約26条
のいずれにも違反するものではない。したがって、旧法下の国籍条項は有効であ
り、これを根拠として、原告らに対し障害基礎年金を支給しない旨の裁定を行っ
た本件各処分はいずれも適法である。 三 争点2について1 国会議員は、立法に関しては、原則として国民全体 に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の個人の権利に対応した関係 での法的義務を負うものではないというべきであって、国会議員の立法行為は、 立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当 該立法を行うがごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家 賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければなら ない(最一小判昭和60年11月21日・民集39巻7号1512ページ)。 2 本件においては、前記で判示したとおり、旧法下の 国籍条項、整備法による改正時及び昭和60年改正法の施行時の不作為を含む各立 法措置について、いずれも憲法14条1項及び国際人権規約(特にB規約26条)に違 反するものではない。したがって、これらに関する国会議員の立法行為及び立法 不作為について、原告らとの関係で、それが国家賠償法上違法と評価すべき余地 はないといわざるを得ない。 3 このように、国会議員の立法行為または立法不作為 に関して、被告国が原告らとの関係で国家賠償法に基づく損害賠償義務を負うと はいえず、もちろん、本件各処分が適法であることは前記判断のとおりであるか ら、原告らの損害賠償についての主張は、その余の点について判断するまでもな く、いずれも理由がないことに帰する。 四 結論以上によれば、その余の点につき検討するまでもなく、原 告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の 負担について行訴法7条、民訴法61条、65条を適用して、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第3民事部 裁判長裁判官 八木良一裁判官 飯野里朗裁判官 財賀理行 |
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